数日後、売り物件の草引きに行った帰りに例の傷害事件があったコンビニに寄った。事件から1カ月が経過していたが犯行時間が深夜で目撃者がおらず、物的証拠も見つからない為に捜査が難航していた。
飲み物を選んでいるとレジ横から男性の声が聞こえてきた。
「やっぱりなぁ、あの時間、電話がかかってきたから棚の上に置いたんだけど、これにも映ってないんだよなぁ」
見ると店長らしき男性がビデオカメラを覗いていた。
「あの時間?」
品出しをしていたバイトが聞き返した。
「ほら、この前の事件だよ。警察が持って行った防犯カメラの映像に犯行時の場面が何も写っていなかっただろ? あの日、陳列具合を見ようと自分のビデオを回してたのを思い出して、もしかしたら写ってるかも知れないと思ったんだけど、やっぱり12分間だけ映像が切れているんだよな」
バイトが店長のカメラを覗きにきた。
「ああほんとだ、なんで写ってないんでしょうね」
二人で映像と棚の位置を見比べている。映像が途切れている? 12分だけ?
「すみません、ちょっと見せてもらえませんか」
強引に二人の間に割り入った。
「すみませんね」
言いながら覗くと、確かに2時からの12分間、撮影記録が飛んでいた。
「あの、ちょっと困ります」
店長がカメラを引いた。
「すみません」
頭を下げてカメラから目を外そうとした瞬間、映像の片隅に白い物が見えた。
「あ、もう一度、もう一度だけ」
無理にカメラを引き寄せて再度画面を確かめた。チラッと映っている白い物。麻衣がいつも提げているショルダーバッグだった。時間は午前2時12分3秒。カメラに保存されていない空白の12分間に、彼女は確実にこの店に居た。 
あらぬ妄想が頭の中を動き回った。まさか彼女が犯人なんてことが・・。画面を写そうと携帯を出したら、怒った店長に腕を引っ張られた。
就業中も家に帰ってからもずっと落ち着かなかった。彼女の周りに起こる時間の謎、彼女はどんな秘密を持っているのだろう。釈然としない気持ちを抱えながら、しかしそれを確かめる術が僕にはなかった。
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